【書評+要約】GRIT やり抜く力 -人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける- / 著アンジェラ・ダックワース ★★★☆☆
「飽きっぽくて、なかなか一つのことが続かない。」と悩んでいるあなたが手に取るであろう一冊。
amazonのレビューは賛否両論ですが、ベストセラーになっているので読んでみました。
- 「GRIT / やり抜く力」ってどういう意味?
- グリット・スケールであなたの「やり抜く力」を測ろう
- 「やり抜く力」を身に着ける重要な4つの要素
- 「やり抜く力」と「年齢」の相関
- 「お客様のために」働ける人って?
- この本のいいところ
- この本の残念なところ
- まとめ
「GRIT / やり抜く力」ってどういう意味?
この本では、「やり抜く力」を2つの要素で定義しています。
- けして消えることのない「情熱」
- けして諦めない「粘り強さ」
肉体的・精神的に辛いことを経験して「もうだめだ!」と思ったときに、「なにくそ!」ともう一度起き上がって努力を継続できる人。
そういう人を、「やり抜く力」があると定義しています。
グリット・スケールであなたの「やり抜く力」を測ろう
長年の研究の末、著者は「やり抜く力」を測るための12つの質問を作成しました。
下記の表を使って、ぜひ一度自分で〇をつけてみてください。
全部足して、最後に10で割るとあなたのグリット・スコアのできあがり。
今の自分の「やり抜く力」度がわかったところで、どうすればやり抜く力を伸ばすことができるのか?その方法を考えていきましょう!
「やり抜く力」を身に着ける重要な4つの要素
著者は、「やり抜く力」を身に着ける上で下記の4つの要素が重要と主張しています。
(※1->4の順番で重要度が高い)
-
興味:「なんだか面白そうだな」
⇒なんでもまずやってみて、興味があるものを見つける -
練習:「もっと上手くできるようにやってみよう」
⇒興味が見つかったら、自分で積極的に掘り下げる。
いろんなやり方を試して、自分に合った効果的な練習方法を見つけ出す。 -
目的:「何を犠牲にしてもかまわない」
⇒行動を続ける中で、問題意識を見つける。 -
希望:「自分ならこの現状を変えることができる」
⇒挫折をチャンスと捉える。
人間の思考には2種類あります。
- 固定思考(自分の能力には限界があり、変わらない)
- 成長思考(やればできる。自分の能力は伸びる)
このうち、後者の成長思考を持つ人の方が「やり抜く力」が高いと筆者は述べています。
「やり抜く力」と「年齢」の相関
筆者が作成したグリット・スケールに基づいて、様々な年齢の人にアンケートを取ったところ、「年を取っている人の方がやり抜く力が強い」という結果が出ました。
この結果について、筆者自身が2つの考察をしています。
- 「やり抜く力」は、育つ時代の文化的な影響を受ける。
- 年を取るに連れて成熟した。(やり抜く力が伸びた)
1について、「戦後の高度経済成長期を生き抜いた人間の方が、やり抜く力を求められたためやり抜く力を持っている」という考察はちょっと強引に感じます。
グリット・スケールは回答者の主観的な評価に基づくのだがら、経験が長い人ほど有利になるのでは?という疑問が湧きました。
2の「成熟した」の要素の方が個人的には強いのではないかと感じます。
「お客様のために」働ける人って?
この本では、「一流の人はみな「クライアントの笑顔が大好き!」と言う」というエピソードが紹介されています。
これは、
「お客様の利益」=「自分の利益」だから、
「お客様」=「私」だからがんばれる。
という意味だと私は思います。
「興味」がやり抜く力には最も大事だとこの本には書いてありますが、人間が最も興味があるのは「自分のこと」だと思います。
心から「あなたはわたしである」という共感を経験することが、「やり抜く力」を伸ばす一歩と言えるかもしれません。
「私たちはみな、意義を求めている。月曜日から金曜日までは死んでいるような暮らしでは満足できない」*3
この本のいいところ
読みやすく面白い!
本を読むならまずこれが大事ですね。
この本には、筆者の経験談や「各界のやり抜いた人」のインタビューがふんだんに盛り込まれています。
アメリカのスペリング大会に参加した子どもたち、プロスポーツ選手など、普段話を聞くことができない人のインタビューを読むことができ、面白いです。
お父さんに「お前は天才じゃないんだから」と言われながら育てられた話、教授に「独創性がない」とdisられて泣いた話など、著者のプライベートな話もたくさん出てきます笑
翻訳もしっかりしているので、1日あればすらすらと読むことができると思います。
この本の残念なところ
発展途中の研究なので、不明なことが多い
この本では、終始心理学的なアプローチで「やり抜く力」を測っています。
そのため、「その人が置かれている環境」と「やり抜く力」の関連という点では論が弱いと思いました。
例えば、「やり抜く力がある人」の対象がすべて欧米圏で閉じているため、アジア圏ではどうなのか?ということは日本の読者としては疑問に思います。
…で、結局どうすればいいのかわからない
この本では、やり抜く力を伸ばす重要な要素として、「興味」「練習」「目標」「希望」の4つが挙げられています。
しかし、「結局どうすればその要素を身に着けられるのか」という方法までは書いていません。
なので、下記のような人にはこの本は不向きです。
- 「そもそも何にも興味が持てない」という人
たまにいますよね、「何にも興味が持てない。趣味もない」という人。
「どうして興味が生まれるのか?」「どうすれば興味が持てるのか?」ということについては、この本には何も書かれていません。 - 「いろんなことに興味はあるけれど、続けられない」という人
「やり抜く」ということは、「一つのことに集中的にエネルギ―を使う」ということです。
「ただ、いろんなことに興味があって選べない!」という欲張りな人だっているはずです。
職人的な生き方をした方が名声は得やすいですが、それが誰にでも向いているとは限りません。
このタイプの人は、ぜひこの記事のおまけを読んでみてください。 - 「どうせ自分がやったって何も変わらない」と自己肯定感が低い人
自分に対して期待できない、というのはいろんなトラウマや失敗体験から来ていますので、「成長思考を持ちましょう」と単純に呼び掛けたところで無意味です。
「成長思考が大切」とはいうけども、「固定思考⇒成長思考にはどうすれば変化できるのか」ということは別途学ぶ必要があります。
(最も、この本を読んだだけで「そうだったのか!」とポジティブになれるのであれば、それでOKですが)
まとめ
「成功する人には「やり抜く力」がある」という学術書としてはいいかもしれません。
ただ「どうすれば物事を続けられるのか」と悩む人に対しての自己啓発書としては向かないです。
「なるほど」と思うことはあっても「やってみよう!」という気持ちにならないので、読んだだけで満足しがち。
本当にやり抜く力を身に着けたい人は、ド定番の7つの習慣とか読んだ方が実践的だと思います。ご参考まで。
- 作者: スティーブン・R・コヴィー,フランクリン・コヴィー・ジャパン
- 出版社/メーカー: キングベアー出版
- 発売日: 2013/08/30
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おまけ:やり抜かなくても生きていく方法
この本では紹介されていませんが、「一つのことを極める、やり抜く」という生き方の対照に、「いろんなことをやる、渡り歩く」という生き方もあります。
「マルチ・ポテンシャライト」と呼ばれる人たち。
こうした生き方の強みは3つ。
下記のTEDトークで紹介されています。
素晴らしいテキストだったのでぜひ読んでいただければ幸いです。